この記事では、
老人ホームで栄養士として働いてみたいな!
どんな仕事内容なんだろう?
と思っている人へ向けて、今回は委託給食会社の老人ホームでの栄養士の仕事内容を書いています。
はじめに:委託給食会社と栄養士
委託給食会社と言うのは、契約先の建物の厨房を借りて食事を作るお仕事をする会社です。そのため、契約先の数だけ働く場があります。
契約先で多いのは病院・老人ホーム・社員食堂・小中学校・幼稚園・保育園・学生寮などで、場所によって働く時間や内容が全く違います。早朝から出勤が必要だったり、土日祝休みがあったり、献立作成の仕事があったりなかったり。一緒に働く人の性別や年齢も変わってきます。
この記事は僕の経験上の話なのであくまでも目安ですが、老人ホームでの勤務内容が自分が働きたいと思っている内容なのか、自分がどんな人とどういう仕事がしたいのか、理想のライフスタイルに合うのかなどを考える際に参考にしてみてください!
老人ホームでの勤務条件
(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設など)
勤務時間目安:5時~22時(この時間内で8~10時間勤務)
勤務体系:シフト制
休み:月6~9回 年末年始やお盆の休みはない。急な欠勤で出勤をお願いされることも。
職場の性別・年齢層:病院と比較して少し若め。栄養士は30代~40代女性、パートさんは50~70代が多い。男性はいて1~2人で、30~50代の調理師であることが多い。若年層は3年くらいで転勤となるため、若い年代は少ない。
*職場の空気感としては、わりと和やかな場合が多いイメージ。もちろん一緒に働く人たちや先方の栄養士さんにもよりますが。。笑
老人ホームの食事・調理業務概要
食事について
老人ホームの食事は、特別な栄養制限のない「一般食」と、症状にあわせてエネルギー・塩分・たんぱく質・栄養価を調整した「特別食」を設けている所が多いです。嚥下能力(飲み込む力)が弱った人のための「ソフト食」を提供する所も増え、最近では一般的になってきました。(ソフト食の詳細は後述)
対応する食種は病院ほど多くありません。
しかしそれぞれの食種について、施設側から1ヶ月間に提供しなければならない栄養価の提示があります。その数値の範囲に収まるように献立を作成するため、病気に対する栄養の知識は必要になります。
調理について
病院に比べて小規模のため、基本的には調理スタッフが1~3人と少ないです。少ない人員でいかに対応できるようにするか工夫が必要とされることでしょう。
委託の場合、栄養士が調理することはよくあるので、調理スキルも求められます。
その他
月に1~2回行われる行事食やイベント食があります。
行事食はクリスマスやお正月など季節に沿った食事の提供、イベント食は寿司バイキングやそば打ち、マグロ解体ショーなど特別感のある催しが行われます。
どちらも普段の食事と違った特別メニューで、入所者の方にとってはいつも以上に食事の時間が楽しみになります。普段あまり食べられない入所者の方もイベントの日だけは3倍食べてしまう、ということも多々あります。それだけ楽しみにされているのです。
食事の詳細
病院での食事と少し被りますが、病院よりも種類は少なく、栄養価の充足基準も甘いことが多いです。
実際に、目標とする月間栄養価から±10%ほど離れていても、先方の栄養士さんから「来月で調整してくれればおっけーよん!」と言われて驚いたこともありました。笑
一般食
【常食】
消化機能に問題ない、普通の食事が食べられる人の食事。施設によっては和食・洋食が選べる選択食を実施している場合もある。
【分粥食】
胃が弱かったり、噛む力が低下した人向けの食事。主食はお粥を提供。おかずは柔らかく煮る・蒸すなどして油を抑えたものにする。ごぼうやれんこんなど、固い食材や繊維の多い食材は避ける。
【きざみ食】
噛む力が低下した人向けの食事。料理や食材を1cmほどに刻んで提供する。これもごぼうやれんこんなど、食べにくい食材は避ける。
【極きざみ(超きざみ)食】
きざみ食を更に細かく刻んだ食事。きざみ食だと食べにくい場合、極きざみ食に変えて食べられるようにすることがある。
また、ミキサー食を食べていた人が、もう少し固形のものも食べられそうだなと判断されたら極きざみ食に挑戦したりもする。
【ミキサー食】
噛む力がなかったり、飲み込む力が低下した人向けの食事。食べるものを全てミキサーにかける。お粥やおかずは全てペースト状とし、とろみ剤などを使って食べやすくする。
【ソフト食】
ミキサー食を固めて、ムースやゼリー状にして食べやすくした食事。
近年老人ホームで増えている食事形態。
見た目も普通の食事に近づくように頑張って作って盛付るため、見た目でも食事が楽しめるようになる。
調理側にとっては一手間二手間かかるので大変だが、ミキサー食を食べられなかった人が食べてくれるとうれしくなる。そんな食事。
特別食
【糖尿病食】
糖尿病の入所者さんのための食事だが、常食の内容を一部変えて提供することが多い。
常食のご飯の量を減らす、デザートがある場合はつけないようにするなどしてエネルギーを調整する。DM食ともいう。
【腎臓病食】
常食をベースに、1日に摂っていいたんぱく質の量に応じて肉・魚・ご飯などたんぱく質量を調整する。(常食ベースでない施設もあります)
ご飯のたんぱく質も減らす必要がある場合は、減たんぱくご飯を使う。減たんぱくご飯は高価なため、予算に注意が必要。
また、たんぱく質を減らした食事は満足度が下がりやすいため、予算が許せば副菜でボリュームを補いたいところ。
【減塩食】
汁の量を減らしたり、減塩醤油などの減塩調味料を使って、塩分量を下げた食事を作る。
食事を細かく刻んだりミキサーにかけたりして、食べやすくなる工夫をたくさんしてるんだね!
病院と違って治療が目的じゃないからな。個人の状態に合わせて、いかにおいしく食べてもらうかを考えてるんだな。
老人ホームでの栄養士の業務
老人ホームでの委託栄養士の業務は、「献立作成」「発注」「調理」「盛付け」「配膳前チェック」などを行ないます。イベント食の起案や施設側の栄養士さんとの献立打ち合わせ、パートさんの教育なども業務に含まれることが多く、コミュニケーション能力は必須といえます。
献立作成
・各献立の栄養価は、施設側が定めた「約束食事箋」という栄養基準に従って、その範囲内に収まるように献立をつくる。
・施設側でやる場合もあれば、委託側でやる場合もある。
・委託の栄養士の場合、献立作成だけではなく調理する場合も多い。たてる献立の数は多くないため、慣れれば大丈夫だが慣れるまでは結構大変。
発注
・委託側に任される場合が多い。
・委託側発注の場合は、在庫を気にしながら発注できればOK。
調理
・委託側のメイン業務。委託だけで行なうことがほとんどで、施設側の調理師と一緒に作業するケースはほぼない。
・配膳前には施設側の栄養士さんに味を見てもらう。病院ほど栄養制限が厳しくないため、味に関しても「おいしく食べてもらえるなら多少味が濃くてもOK」という考えの人も多い(もちろんそうではない人もいます)。
・栄養士は調理の進行状況を見ながら遅れている場所に指示を出したり、自分が代わりに調理したりするなど現場を回していく役割に当たることが多い。
盛付け・配膳
・出来上がった料理を病態別に食器に盛付ける。見た目は同じでも、片方は脂質を抑えるためにノンオイルドレッシングを使っているなど、使う調味料が違う場合などがあるので慎重に作業する。
・盛り付けたら、入所者さんの病気と食事内容が書かれた食札を見ながら、食器をトレーに乗せる。ここで間違えると、入所者さんが食べてはいけない食事が行ってしまう可能性があるので、一番の注意が必要。
・配膳前の最終的なチェックまで委託側に任されることもしばしば。そういう場合、リスクを減らすために施設側栄養士にも一緒に最終確認してもらえるようお願いしておくのが良い。
食事に関しては委託側におまかせ!って感じのところが多いのかな
きっと施設側の栄養士さんは
入所者さんの栄養ケアとかに力を入れたいんだろうな
老人ホームの栄養士は献立作成や調理業務はもちろん大変ですが、施設側の栄養士さんとの関係づくりが大切になると僕は思います。
献立のチェック、料理の味見の他にも入所者さんに提供する食事内容の検討など、たくさんの打ち合わせをする可能性があり、関係性によってはとても仕事がやりにくくなるからです。
他の業態でももちろん同じことが言えますが、老人ホームで働く場合は特に気をつけたほうがいいかもしれません!
ということで、老人ホームの委託栄養士の仕事内容についての記事でした!
他の業態についても書いていきますので、よかったら読んでみてくださいね。
*他の業態の記事はこちら
病院
社員食堂
小・中学校
幼稚園・保育園
学生寮
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